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コラム

よりわかりやすい洗練されたマニフェストづくりのために・・・
大西一史(熊本県議会議員)

行政改革、財政改革、市町村合併などの動きと連動するように、ここ数年全国の地方議会議員の定数削減が各地で実施されており、私の所属する熊本県議会でも来年の統一地方選挙から定数が6議席削減されます。

巷間よく言われるように、「財政が厳しいのに議員の数が多すぎる。削減すべきである。」という市民からのご意見があります。私自身議員になる以前は、「世の中こんなに議員がいるが、何やってるかわからんのに、こんな数はいらんじゃないか?」と思ったものでした。そして、実際に議員に立候補し、議会の定数が適正であるかどうかを適宜見直していくことが必要であると選挙の際に何度も繰り返し、議会の場において定数の見直しも主張してきました。

しかし、良く考えてみれば、議員定数を削減するということはそれだけ「住民の代弁者」としての機能が低下するとも考えられますし、成熟した社会において、住民の行政に対するニーズはますます複雑多様化していますから、逆に「住民の多様なニーズを反映するためにも、議員の定数を増やすべきである。」というご意見が少し位出ても良さそうなものですが、そうしたご意見を少なくとも私はこれまで一度も聞いたことがありません。

それでは、なぜ議員の数を減らせという声が大きいのでしょうか?
それは私達議員が住民の皆さんから信頼されていないと考えてみるとわかりやすいのです。

少し古いデータですが、2002年12月23日の朝日新聞に掲載された世論調査結果によれば、政治家を「信用する」とした人がなんと2%、「ある程度信用」が13%、合計たったの15%で、政治家を信用すると答えた人が8項目の職種のうち最低だったのです。

そして驚くことに、8項目の職種の内訳は、トップが天気予報で92%。以下、新聞84%、医者81%、警察65%、教師58%、銀行51%、占い20%の順だったそうです。
いずれにしても、政治家が世間の皆さんからほとんど信用されていないということが伺える結果で、この記事を読んだときに私は愕然としてしまいました。「占いよりも信用されていない仕事に従事しているのか・・・」と。

そしてなぜ政治家が信用されていないのか、またどうすれば信頼される存在になるのか?自問自答してきました。

少なくとも「住民から納められた税金で報酬をもらって活動している議員」と考える有権者にとって、「そのコストに見合うだけの活動をしていない。」と思われていると考えられます。
それは、議員の活動が見えにくい、また評価しにくいという点が課題として挙げられます。

私は、NPOドットジェイピーが行っている「議員インターンシップ」という大学生を対象に実際の政治の現場を体験してもらうプログラムに参加して、毎年多くの学生の皆さんを受け入れていますが、学生の皆さんが生の政治の現場に触れてみて、地方議会や地方議員に対するイメージが大きく変わったと言います。少なくとも参加する前のイメージよりも良いイメージで受け止められているという調査結果も出ています。実際にインターン生にインタビューしても、「こんなに議員が私達の身近な事柄について発言をしているとは思わなかった。」「政治に対するイメージが良くなった。」など、議員の活動に対してポジティブな反応をする学生が圧倒的に多いのです。

しかし、実際に私たちに投票をしてくれる(もしくはしてくれない)有権者の大多数はインターンなどできるはずも無く、また議員と実際に触れる場すらないのが実態であり、私たちの議会活動を知る方法はほとんど提供されていないに等しいと思います。
これは、私たち議員、議会側の情報提供のあり方に問題があることは言うまでもありませんが、また一方で、有権者の側も自分に直接利害関係の及ばない課題に対しては意外と関心が低いという側面もあって、実際の議会活動について積極的に知る努力をしない。
すると、そういう有権者に対して議員もそこまで深く政策課題に対して積極的に説明責任を果たそうとしてこなかったということが言えると思います。そんな状況では信頼される存在になれるはずがありません。

こうした有権者と政治の距離をできるだけ縮め、また、議員の政策を選挙前、選挙後にチェック、評価することが可能なものがローカルマニフェストです。そして、このツールを使って有権者と首長や議員が選挙の際にいわば「契約」をするということにより、地方政治の信頼回復にもつながる活動であると期待をして、私もローカルマニフェスト推進地方議員連盟の運営委員会に参加しました。

実際に九州においては、「ローカルマニフェスト推進ネットワーク九州」また、九州各地の青年会議所の皆さんの努力により、各地の首長選挙において「ローカルマニフェスト型公開討論会」が既に何度も実施されており、今後の選挙においては「やるのが当たり前」という流れになっています。また、選挙後のローカルマニフェストの評価、検証をする大会も既に何度も開催されており、今後はこうした動きがますます活発化していくと期待しています。

しかし、マニフェストという言葉が日本の政治の中で使われるようになってまだ日も浅いですから、実際にはマニフェスト自体が発展途上段階にあるのが現状であり、課題もまだまだ多いと感じています。

例えば、03年の総選挙において各政党はマニフェストを出しました、また04年の参院選挙においてもマニフェストを出しました。そして、昨年秋に行われた衆議院総選挙において、また各政党はマニフェストを出しました。しかもそれらがしっかりと検証されること無くそれぞれの選挙毎にマニフェストが出されております。

また、それぞれの選挙においてそれらを熟読し投票の際の判断基準した有権者がどれだけいたのでしょうか?
少なくとも私の周辺の方々のお話を伺ってみても、「マニフェストを見たことが無い」「参考にしていない」「そんなものいちいち読むのは面倒だ」などの声が多く聞かれ、各政党のマニフェストが有効に機能し、投票行動に影響を与えたとはとても言えない状況であったと思います。

特に昨年の総選挙においては、マニフェストの中の項目の一つである「郵政民営化、是か非か」という、小泉首相のいわゆる「ワンフレーズポリティクス」に多くの国民は反応をしました。投票に際して色々な判断基準があったとは思いますが、多くの有権者は政策に反応したようで、実は政治家の覚悟や決断に反応し投票行動の判断材料にした面が強かったのではないでしょうか?

また、衆院選から既に1年が経過しようとしていますが、これまで各政党のマニフェストに対してどれだけの検証がされてきたでしょうか?少なくともきちんとした検証はされていません。
そういう状況の中で今の話題は、ポスト小泉、自民党総裁選挙に注目が集まっていますし、マスコミ各社の報道も政策よりも権力闘争の方に力点を置いているようで、確かに傍観者として見ている側からすれば興味深いのかもしれませんが無責任な感じがします。

国政におけるマニフェストの状況もそうですが、最近ちょっと気になったのは、先日行われた滋賀県知事選挙です。その中で争点となった「新幹線新駅の建設是か非か?」という点です。新人候補は30ページ近くのローカルマニフェストを作成していましたが、実際にはその中の一部の項目である公共事業について「もったいない」をキャッチフレーズに選挙戦を展開し、「新駅は凍結」などと主張し、これまでの現職を激しく批判し勝利しました。

私は遠く離れたところから見ていて、この県知事選こそワンフレーズポリティクスではなかったのか?と疑問を感じました。ワンフレーズで主張をすれば争点もはっきりしますし、有権者にとってもわかりやすく手っ取り早いのですが、それ以外の政策課題については「一任」ということにもなりかねない危険性があります。どこかの料理番組ではありませんが、今夜の夕食は「どっち?」と単純に決めるのとは重みが違うのです。

こういう現状、傾向を見ていると、今後マニフェストが本当に有権者と政治をより密接に結びつけるツールとして有効に機能するのだろうか?不安を感じる点もまだまだありますが、例えば、私達の仲間であった現北海道恵庭市長の中島興世さんが作られた挿絵を沢山使って読みやすくわかりやすいローカルマニフェストなどをはじめ、全国各地の同じ志の仲間たちの活動とともに、確実にローカルマニフェストがより有権者に身近でわかりやすいものになってきていると感じます。

私はローカルマニフェスト推進地方議員連盟の一員として、より有権者がわかりやすい洗練されたローカルマニフェストづくりに向けてこれからも地道に活動をしていきたいと思っています。

2006年8月7日 熊本県議会議員 大西一史

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