「決算を予算に活かすには~令和6年度決算審議を経て~」開催報告

公開日 2025年11月1日

 2025年10月31日(金)決算フォローアップセミナー「決算を予算に活かすには~令和6年度決算審議を経て~」を会場(東京都国立市)&オンラインにて開催しました。今回は、約45名が参加。うち半数は、7月末に開催した「決算審査直前 特別集中セミナー」の参加者でした。前回に続き今回も学ぼうという姿勢から、さらに決算・予算を充実したものにしたいという意欲が伺えました。

決算フォローアップセミナー

 会場の様子。企画から事例報告、配信まで会員の議員が担当している

 

 はじめに、江藤敏昭 大正大学教授が「地方議会の政策サイクル~財政危機と自治を考える~」と題した基調講演を行いました。冒頭では、10月27日に江藤教授が出演したフジテレビ『サン!シャイン』の特集「財政危機と自治体」の映像を上映。人口減少やインフラ老朽化など、どの自治体にも共通する財政危機の現状を紹介し「財政にとって一番大事なのは決算。準備の仕方が大切であり、事務事業や政策評価を決算に活かすことも必要。しっかりとした監視を行うことが翌年の予算の質につながる」と述べました。

 

決算フォローアップセミナー

この講師陣でのセミナーは4度目。江藤教授(写真中央)の指導とともに実践報告も毎回進化

 

 続いて、川上文浩 可児市議会議長から「決算審議を次年度予算に活かす方法」と題した報告がありました。そのなかでは、可児市議会での予算・決算審査サイクルや、具体的な審査手法について丁寧な説明がありました。重点事業点検報告書の活用では、質疑の内容が年々充実し市民福祉の向上につながっていることを熱中症対策事例を交えて紹介しました。さらに「『予算編成に向けた提言』を議会としてまとめることで、執行部の動きを促す効果を実感している」と述べました。加えて、財政調整基金の取り崩しが進む現状に触れ「これからは議会のチェック機能・監査機能がより問われる時代に入っている」と強調しました。

 

決算フォローアップセミナー

可児市議会での取組みと今年の決算の特徴を解説する川上議長(写真左)

 

 続いて、子籠敏人 あきる野市議会議員から「監査を決算審査に活かそう」と題した報告がありました。そのなかでは「決算審査意見書の確認」「執行率の低い事業への注目」など、具体的な監査の着眼点が紹介されました。歳出予算の執行率や見積書の有効期限といった実務的な事例も示され、監査の精度を高める工夫が共有されました。また「前例踏襲や属人的判断に頼らず、他市の状況を調査し、長年改正されていない見直しを進めることも有効」と提言。さらに「組織に潜むリスクを早期に発見し、健全な運営を支えるのが監査の役割」と述べ、あきる野市でも監査の視察も積極的に受け入れ、互いに学び合う環境を整えていくと述べました。

 

決算フォローアップセミナー

監査改革を進める子籠議員(写真右)のもとには、監査の視察に訪れる自治体もある

 

 後半は、会場・オンライン双方から活発な質疑が行われました。参加者からは、各議会での決算審査の現状や課題、監査の専門性や継承の仕方、守秘義務の扱い、ジェンダー視点の重要性、委員長の采配など、幅広いテーマについて質問や意見が寄せられました。前回のセミナー参加者からは「学んだ内容を実際の決算審査で活かせた」という嬉しい報告もあり、学びの成果が現れつつあることが感じられました。江藤教授は最後に「監視と監査が連携し情報を共有することで、市民福祉は確実に向上する。議会の視点が変われば、執行部の姿勢も変わる」と述べました。そして「議会改革によって議会事務局が変わったように、監査委員事務局も充実させることができる。研究と実践を重ね、決算・予算・監査の質を共に高めていこう」と呼びかけました。

 セミナーの内容は多岐に渡り、多くの気づきあるポイントがありました。そのため、この開催報告だけではまとめきれませんでした…。今後、内容を改めて整理し、共有を進めていく予定です。学びを一過性のものにせず、各自治体での実践と共有を積み重ねることで、市民福祉の向上につながる決算・予算の充実を目指していきたいと思います。

(事務局・N)

決算フォローアップセミナー

会場の様子。次回は、予算セミナーでお会いしましょう!

 

決算フォローアップセミナー

オンライン参加者とも記念撮影