「全国地方議会サミット2025」【DAY1】炎上の時代とSNS・AI、議会改革度調査 開催レポート

公開日 2025年11月8日

 2025年11月8日(土)「全国地方議会サミット2025」の1日目を法政大学(東京都千代田区)とオンライン併用で開催しました。今年は全国から330名を超えるお申込みがありました。

 本サミットは、自治の根幹である地方議会の先進事例や現状課題を共有し、1年に1度全国の議会関係者が生きた学びの交流を行う場です。今年は、近年の議会動向を象徴する「SNS・AI・DX」「主権者教育」「議会改革」のトピックスを中心に、これから議会が進むべき方向性を議論します。【DAY1】では、新たな技術が与える社会への影響から地方議会が岐路に立っている現状と、最新の議会改革のトレンドを学ぶことを目的に開催しました。

 はじめに、廣瀬克哉 法政大学法学部政治学科教授よる「『炎上の時代』の政治コミュニケーション」と題した基調講演が行われました。講演のなかで廣瀬教授は「SNSには炎上を自動的に増幅させる構造がある」としたうえで「自分の考え方、実現しようとする社会のあり方、ものごとの進め方について『誰か』との間の丁寧なコミュニケーションで確立することが、炎上の時代であっても何よりも大事」と述べました。

 

 

 続いて、【SNSと地方議会】「『民意』はどうできていくのか? SNSの影響と地方議会の方向性」と題したセッションが行われました。そのなかで、株式会社JX通信社代表取締役の米重克洋氏は「インフレとメディアシフトが起こす 日本政治の地殻変動」と題した発表を行いました。米重氏は「選挙においてもメディアシフトの影響は顕著」だとし「対立的な言説が広まりやすいネットの情報空間」について指摘をしました。

 さらに、大森翔子 法政大学社会学部メディア社会学科准教授が「SNSが有権者に与える影響」と題した発表を行いました。大森准教授は「SNSで接する政治情報は『偶然的で断片的』なもの」としたうえで、「健全な地方政治参加・民主主義に資するためには、リアルでの双方向の対話を継続できるかが鍵」だと述べました。

 質疑応答のなかでは、「東京ではなく地方の話題をSNSで個人にどう届けるか」「地域のオピニオンリーダーと地方議員の関係性の在り方」などについて質問があがりました。廣瀬教授は「現代では、人々が最も長い時間接しているメディアはインターネット。対面だけではなく、感情的でも対立的でもない形で『エンゲージメント(自分と強い関わり)』を持つ『界隈(コミュニティ)』が形成され、リアルとネットの両方で存在することができれば、議員選挙や政策づくりにおいて大きな力になる」と述べました。

 

 

 次に【AIと地方議会】「活性化?不要?AIで議会・議員はどう変わる? 世界と日本の今と未来」と題して、高選圭 福島学院大学地域マネジメント学科教授と、河村和徳 拓殖大学政経学部教授が発表を行いました。高教授は海外での多数の先進事例をあげたうえで「AI活用の目的」について「行政情報のさらなるオープン・開放・行政資源の利活用をめぐる自治体運営の哲学が必要」だとの認識を示しました。また河村教授は「日本は民主主義を支える分野のデジタル活用後進国」だとしたうえで、コロナの教訓を活かし「デジタル・インクルージョン的発想やどこからでも議会に参加・公開可能なシステム構築が必要」との提案を行いました。

 会場からは「韓国の済州島でオープンデータを進めた取組みに際し、執行部側からはどのような抵抗があったのか。またどう対応したのか」「AIは使わざるを得ないが、小さな自治体は情報量がない。大きな自治体との格差が出てしまうがどのようにしたらよいか」「国会と地方議会では違いがある。会議録のオープンデータをどのように進めていけばよいか」などの質問があがりました。

 AI時代に対応するには、地方議会も変わることが求められます。高教授は「時代の要求は早いし、非効率性の批判は自治体にいく。必要な予算を増やし、仕組みをつくる権限交渉が必要ではないか」と述べ、河村教授も「予算の重要な決定は地方議会がすると地方自治法で決まっている。必要な議会のバージョンアップについて、いかにアピールしていくかが大事だ」と述べました。

 

 

 最後に「議会改革のトレンドと注目議会 ~地域経営のための議会改革度調査から~」と題して、早稲田大学デモクラシー創造研究所招聘研究員の山内健輔氏が発表を行いました。山内氏は「できることからTTP(徹底的にパクる)」を提案しながら、議会における生成AIの活用状況、シティズンシップの推進、議会報告会の工夫などについて現状と課題の報告を行いました。

 そのなかで、AIについて山内氏は「生成AIは文字の量と質が大事。議会はすでにその情報の宝の山を持っていることを認識してほしい」と述べ、文書作成支援や要約生成、広報などでの活用について紹介しました。そして、無投票を克服した議会の取組みや、新たなチャレンジを進める議会について複数の紹介を交えながら「サミットに参加するだけでなく、さまざまな事例を持ち帰り、各地域での実践につなげてほしい」と参加者に呼びかけました。

 

 

 多くの課題提起と事例を学んだ1日目。終了後の18時半~は、同大学内で講師と参加者による意見交換会が開催されました。サミットを受講した感想や各議会での課題共有など活発な意見交換が延々と続き、参加者同士の生きた交流が行われていると感じました。サミットは2日間開催、まるで合宿のように濃密な時間をともに過ごします。そして【DAY2】に続きます。

 

(事務局・N)

 

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