第09回 LM会員定例会「大震災発災時とその後の議会対応~何ができて、何ができないか?」開催報告

公開日 2026年3月6日

 2026年3月5日(木)、第09回LM会員定例会「大震災発災時とその後の議会対応~何ができて、何ができないか?」を開催しました。講師は、LM会員の福田利喜 岩手県陸前高田市議会議員(6期目/元議長)です。今年は、東日本大震災(2011年3月11日発生)から数えて15年目。現地で被災した議員として、発災時の議会対応を振り返り、全国の地方議会で何を教訓とすべきかをお話しいただきました。

 

 

 陸前高田市では市街地を津波が襲い、議員2名が住民の避難誘導中に亡くなられています。3月15日には定例議会が自然閉会となり、3月28日に中学校校舎で臨時議会を開催し、未成立だった新年度予算等を議決しました。そして同年12月には、復興計画を議決しています。

 当時、復興計画を議決要件とした被災地の議会はそれほど多くありませんでした。しかし、陸前高田市議会は、まちづくりに関わる重要な事項であるとの認識から、総合計画と同様に議会で議決すべきだという結論に至ったとのことです。復興対策特別委員会も設置しました。

 福田議員は、災害時の議員の動きについて、「地域も自宅も被災しなかった議員」「地域が被災した議員」「自らが被災者となった議員」と区分して活動を整理しました。その中で、避難した住民から「議員が何をやっているのか一向に見えない」「避難所回りもしない」という指摘があったことをポイントとしてあげました。

 そして、議会が復興に関わったことに、議会基本条例で復興計画を議決要件としたことに加え、復興対策特別委員会を設置したことがあります。復興事業のチェックを10年間にわたり続けましたが、復興計画そのものの検証はできなかったとのこと。福田議員からは「この計画の内容でよかったのか、国の制度は正しかったのか、何が足りなかったのかを、議会として後世に伝えたかった」とお話がありました。

 

        

 

 また、陸前高田市議会の対応について、評価される点と評価が問われる点についてもお話がありました。最も意見が対立したのは、市庁舎をどこに建てるかという課題。議員間討議を重ね、議員有志のグループが情報発信を行ってきました。また、震災後も毎年「住民と語る会」を開催し、仮設住宅を回るなど、住民の意見を聞く努力を続けているとのことです。一方、評価が問われる点としては、議論が市民に公開されなかった機会があったこと、復興計画を議論する際に土木・都市計画分野の専門的知見に欠けていたことでした。事業途中での評価が行われず、事業の軌道修正を議論できなかったことなどもあったそうです。

 議会BCP(業務継続計画)も定めている陸前高田市議会。地震や津波が来たときの議員の動きはマニュアル化されています。執行部で災害対策本部が設置されると同時に、議会でも災害対策会議を設置。震度5や津波警報があった際は、議長・副議長・議会事務局長が議会に参集することも決めています。福田議員は「大規模災害の際は、議会は議員が定数の過半数集まらなければ会議も開けない。そのためには議員自らが身を守ることが重要」と話しました。

 参加者からは、「災害時の障がい者への対応はどうしていたのか」「区画整理事業と土地の価値の変化について詳しく知りたい」「自然閉会とはどのような状態なのか」「大規模災害発生に備えた議員の任期延長制度をどう考えるか」など、具体的な質問も上がりました。さらに、「今振り返って、戻れるなら何をすべきだったと思うか」という質問もありました。

 

 

 福田議員は、教訓として「大型プロジェクトは動き出したら止まらない」「団体の決定は議会だが、結果責任を取る覚悟はあるのか」と語りました。現在の陸前高田市の土地の写真を紹介しながら、中心地で埋まっているのはほぼ市の公共施設であることにも触れました。そして「誰がいまの状況を想像できたでしょうか」と問いかけました。

 区画整理事業を用いて中心市街地に住んでいた方々が高台に移転した結果、その面積の約6割が未利用地で利用計画がない状態。震災による減免が終わった後から、固定資産税が値上がりし支払いが大変になっており、地域コミュニティをつくることにも苦心しています。震災当時、2万6千人を目指していた市の人口は現在1万7千人ほど。人口減少率は29%で沿岸地域最大となっています。2050年には6千人になるとの見方もあるのだとか。福田議員は「この現状を見ていただくと、議会が何をすべきだったのかという答えになるのでは」と話しました。

 率直に、淡々とお話しくださった福田議員。しかし東日本大震災の被災現場では、わたしたちの想像を超える壮絶な現場で試行錯誤の連続だったと思います。全国で災害が増えている今、陸前高田市議会の取組みと福田議員のお話は生きた教訓です。まちづくりの長期的な展望や、土木・都市計画など専門的知見の大切さも教えていただきました。ここから全国の議会が学び今からでも実践できることは多くあるのではないかと思いました。

(事務局・N)

 

 

<これまでの開催報告>
第08回 「こども・若もの×議会〜陳情事例から考える声のいかし方~」
第07回「議会報告会をどうしよう?~住民にも議会にも最適な工夫を探る~」
第06回「女性議員と議会~多様な政策を展開するためにできること~」
第05回「議員に必要な法律知識『初動を間違えるな トラブル対処の勘所』」
第04回 「スポットワークと自治体連携、地方創生の可能性」
第03回「ショート動画の基礎知識&Instagram運用の本質」
第02回 「議員のための生活保護の基礎知識と生活相談の実践編」
第01回「ChatGPTで進化する議会活動」