アニメ動画を用いた小学生段階からの主権者教育の実践とその効果検証(弘前大学教育学部准教授 蒔田 純)

公開日 2023年8月4日

2022年「ローカル・マニフェスト大賞(市民・団体の部)」優秀賞を受賞した蒔田純 弘前大学教育学部准教授の取り組みをご紹介します。

取り組みの紹介

選挙をテーマとするアニメ動画「ポリポリ村のみんしゅしゅぎ」を作成し、それを用いた出前授業を全国の小学校で行っています。村長選挙が舞台のこのアニメ動画では、途中、二人の候補者に対して聴衆である児童が実際に投票を行い、その結果によってその後のストーリーが変化します。このような模擬投票的な要素を組み込むことによって、子供たちはアニメの中で選挙体験をし、「自分の思い(一票)と社会とのつながり」を学ぶことになります。2023年7月現在、授業は42の学校で63回行い、その教育的効果を検討した論文3本を発表しています。また、2021年にはアニメ動画が絵本として出版されています。

 

 

マニフェスト大賞受賞の感想

このような賞をいただき、多くの方に私の取り組みを知っていただいたことは純粋な喜びでしたし、この受賞が主権者教育を更に盛り上げていくための一つのきっかけになればと思っています。マニフェスト大賞を機にいくつかのお声がけをいただき、それが新しいプロジェクトにつながる可能性も出てきていますので、受賞を励みに、今後も地道に着実に「善政競争」の一端を担っていきたいと思います。

 

 

受賞後の展開

昨年以降、特に海外での出前授業に力を入れており、日本を除くと8ヶ国(パプアニューギニア、インド、東ティモール、台湾、クック諸島、タンザニア、ラオス、アンゴラ)で15回の授業を行っています。これまでは全てオンライン実施でしたが、移動の制限もほぼなくなりましたので、これからは実際に相手国を訪問しての対面実施を増やしていこうと思います。民主主義が国際関係の構造を規定する一要因になっている現在、未来を担う各国の子供たちに民主主義の意義を分かりやすく教え、社会全体への定着・浸透を図っていくことは極めて重要です。民主主義の裾野を広げていくには、地道な活動が必要。そう信じて、この出前授業を続けていきたいと思います。

 

 

マニフェスト大賞の醍醐味

マニフェスト大賞の特筆すべき点は、その注目度の高さと参加者の幅広さだと思います。受賞した取り組みは、政治行政関係者やメディア関係者の間で先進事例として話題に上がることになりますし、首長・行政庁・議会・市民・団体という政官民すべての主体がアイデアと実行力を競い合う形の中では、立場を超えて「良き社会」を目指すネットワークが生まれます。民主主義を信じ、社会のために何かを始めたいと思う人にとって、マニフェスト大賞は自らの可能性を広げてくれる最高の機会となります。思いを形にしたい方は、ぜひ応募することをお勧めいたします。

 

 

プロフィール

1977年、石川県生まれ。弘前大学教育学部准教授。
政策研究大学院大学博士課程政策プロフェッショナル・プログラム修了。博士(政策研究)。衆議院議員政策担当秘書、総務大臣秘書官、新経済連盟スタッフ等を経て、2018年4月に弘前大学に着任、2022年4月より現職。総務省主権者教育アドバイザー、青森県明るい選挙推進協議会委員。著書に『ポリポリ村のみんしゅしゅぎ―絵本で選挙を体験しよう―』(かもがわ出版、2021年)、『政治をいかに教えるか-知識と行動をつなぐ主権者教育-』(弘前大学出版会、2019年)など。