交通事故の「見える化」でEBPMを促進 ~警察庁「交通事故統計情報のオープンデータ」を誰もが使えるBIツールで全国に公開~(横須賀市議会議員 小林 伸行)

公開日 2023年8月15日

2022年「グッドアイデア賞」優秀賞を受賞した小林 伸行 横須賀市議会議員 の取り組みをご紹介します。

取り組みの紹介

■交通事故の多発地点をデータで「見える化」
 私は昨年、自分のまちの交通事故多発地点をWeb上で調べられるツールを提供して受賞しました。


https://public.tableau.com/app/profile/.60441002/viz/2019to2021_16612593934870/2


 12年前に市議になり、交通事故防止は道路管理者である市の仕事でもあることを恥ずかしながら初めて知りました。そのため、「交通事故の発生地点や発生原因のデータは出せないか?」と、市の地域安全課から地元の警察署にも問い合わせていたのですが、「情報が整理されていない」と断られてきた経緯がありました。


 そんな折に、朝日新聞の特集「みえない交差点」シリーズを目にし、警察庁が都道府県別の交通事故情報を一元化し、オープンデータ化してくれたことを知りました。ただし、朝日新聞の調査報道は全国有数の事故多発地点に焦点がありました。Web公開の地図も実際に対策にあたる市区町村や警察署単位では見られませんでした。


 そこで私は、自分で警察庁のデータ3年分・約100万件の交通事故データを分析し、わかりやすく公開しました。当初は横須賀市だけの地図を作るつもりだったのですが、コンピューターにとっては3,000件も100万件も関係なく作業の手間は一緒なので、全国版で作成したのです。


 地元の警察署にも共有したところ「県警のシステムではリスト化はされても地図に出力はできなかった。これまで経験的に事故多発地点を把握してきたが可視化すると新たな気付きもある。分析を提供頂きありがたい」と評価頂きました。


 意外なことに、事故多発地点は必ずしも交通量の多い場所ではなく、どっちが優先かわかりにくい信号のない交差点ばかりでした。データを基にしたEBPM(根拠に基づいた政策づくり)は、少ない費用で効果の高い対策が打てるため、今後ますます重要となると考えています。

 

 

マニフェスト大賞受賞の感想

■認められて、報われて、また頑張る気持ちに
 せっかく作っても、ほとんど誰にも見てもらえなかったのですが、受賞後はアクセスも増え、何人もの議員から「うちのまちで事故が多いのは意外な場所だった!」等と多くの反響を頂きました。苦労して作成したので、ようやく報われた気がしました。今回のツールで1人でも多く命が助かればプライスレスです。

 

受賞後の展開・マニフェスト大賞の醍醐味

 横須賀市議の議員報酬1100万円/年と政務活動費156万円/年は高すぎると市民からよく言われます。しかし、年間約1600億円の予算を預かっており、議員の判断一つで数十億円もの税金が浮くような仕事です。でも、頑張ってもなかなか評価されず、正直言ってモチベーションが下がっていた時期でした。
 私は文系の素人ですが、全国的にも高めの横須賀市の政務活動費でガンガン研修を受けてノウハウを学び、今回のツールを制作しました。「議員を減らせ!」「報酬を下げろ!」ではなく「議員にちゃんと仕事してもらうとメリット大きいね!」と言われたい。今回の受賞は「そんな議会に変えていってくれよ!」というメッセージのような気がして、ヤル気がまた湧いてきました。
 

 

プロフィール

横須賀市議会議員四期⽬。1975年福島県鏡石町⽣まれ。筑波⼤学⼈⽂学類卒。地域情報誌社勤務の後、CSRコンサルティング、シンクタンクのリサーチ支援、NPO中間支援組織等に携わり、衆議院議員政策秘書を経て2011年より横須賀市議(4期)。民間・NPO・行政のトライセクターでの勤務経験とGIS・BIツール等でのデータ分析を強みとし、他自治体のDX支援にも関わる。マニフェスト大賞で6回連続8回受賞。早稲田大学公共経営大学院修了。