学校現場での授業実践に基づいた『生成AIの初等中等教育でのガイドライン策定に向けた提言』で議論の活性化をはかる(特定非営利活動法人みんなのコード)

公開日 2024年7月1日

2023年「グッドアイデア賞」優秀賞を受賞した特定非営利活動法人みんなのコード の取り組みをご紹介します。

取り組みの紹介

みんなのコードは、「誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする」をビジョンに掲げ、2015年の団体設立以来、小中高でのプログラミング教育等を中心に、情報教育の発展に向け活動してきました。

ChatGPTなどの生成AIツールに対する社会的な注目の高まりを受け、2023年4月には、文部科学省でも生成AIの取り扱いについて、学校現場が判断する際に参考となるガイドラインを作成することが予告されたため、議論のきっかけを創出できるよう、「生成AIの初等中等教育でのガイドライン策定に向けた提言」を発表しました。

本提言は、私たちがこれまで関係してきた様々な学校現場での実践を踏まえ、考慮すべき観点を以下の3つにまとめました。
1.    AIを「人間が高度な知的生産をするためのもの」と認識する
2.    コンピュータと適切に対話する力も重視する
3.    思考力・判断力・表現力等に及ぼす影響についても議論する
これらは、多くの人が生成AIを利用できるからこそ、意識して心がけなければ埋もれてしまう論点だと考えています。

マニフェスト大賞受賞の感想

 みんなのコードは、2022年から、これからの情報教育を創るために「みんな」の声を聞き、「みんな」で考える機会を増やしていきたいという思いで取り組んできました。学校現場での実践のみならず、政策提言の面でも取り組みを評価いただけたことを嬉しく思っています。
生成AIのような変化のスピードが早く、学びの在り方が問われるような情報技術について、学校での実際の授業実践も含めた提言活動を迅速にしたことで、「議論の本質は何か」を問いかける役割に貢献したことを評価いただいたものと認識しています。

受賞後の展開

学校現場でも安心して使いやすいようなプロダクト「プログルラボ みんなで生成AIコース」ベータ版を開発し、2023年12月には、これを無償提供する「生成AI100校プロジェクト」を開始しました。わずか4ヶ月間に、全国104校から申し込みをいただき、授業等でご活用いただいた結果、6,019名の児童・生徒等による、36.8万件の対話を実現しました。また、先生、児童・生徒にはアンケートにも回答いただき、そこから得られた示唆を2024年5月にリリースしました。
引き続き、現場での実践と、実践からの気づきに基づく政策提言の両輪の活動を続けていきたいと思います。

マニフェスト大賞の醍醐味

大きく2点の醍醐味があると思います。一つ目は、より良い社会の実現のために尽力している、他領域の「仲間」の存在を知ることができること。マニフェスト大賞には様々な活動をされている方が集まりますので、授賞式などでは多くの学びがありました。二つ目は、自分たちの取り組みの意義・価値を改めて言語化することで、活動の継続意欲が刺激されること。日々の活動を振り返り、その意義・価値を世の中に発信できるチャンスを得られたと考えています。次回以降も、多くの皆様が相互に学び合えることを期待しています。
 

 

プロフィール

田嶋美由紀(たじまみゆき)
特定非営利活動法人みんなのコード 政策提言部/情報教育研究員
文部科学省に新卒で入省後、文化財保護、学習指導要領の改訂・普及に関する業務を経験。文化系の公益財団法人、コンサルティングファームを経て2022年5月にみんなのコードに入職。教育行政の経験を活かし、情報教育の充実に関する政策提言の業務に従事するほか、学校現場での実証研究成果の分析等を行う。著書に『学校の生成AI実践ガイド 先生も子どもたちも創造的に学ぶために』(共著、学事出版)

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