第15回受賞結果

※受賞団体・個人名の下段は、審査委員講評を記載しています
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■マニフェスト大賞

グランプリ

 

多治見市長 古川雅典 (岐阜県多治見市)

 

■マニフェスト推進賞<首長部門> 

最優秀賞

多治見市長 古川雅典 (岐阜県多治見市)
多治見市では平成15年から約17年に渡ってマニフェストを掲げた統一地方選挙を実現。現在では、市長および市議会議員はいずれも選挙においてマニフェストを掲げ、市民もそれらを投票の参考とする様子が定着している。一方、硬直化する財政においてマニフェストの実現は非常に難しくなるが、多治見市では、市民や有識者、執行部、市議会の3者による徹底した議論とその末の政策決定を経ることで個々のマニフェストを事業計画に落とし込むとともに財政的な担保を確保することで市長や市議会議員が掲げたマニフェストの100%実現を目指しており、正に民主主義の根幹となる選挙を軸に為政者と住民、行政職員の意識の変化(民主主義の成熟)に挑戦している。

審査委員会
特別賞

新城市長 穂積亮次 (愛知県新城市)

令和2年6月、『新城市市長選挙立候補予定者公開政策討論会条例』を制定。この条例は、新城市自治基本条例に基づく市民自治会議、市民まちづくり集会、地域自治区制度、若者議会や女性議会など、市民の多様なまちづくりへの参加の機会を設けてきたことにより、新城市の市民自治が深まり、条例化するに至った。条例化により、市民の「知る権利」を保障し、市民が主役のまちづくりを推進することを目的とした全国初の意欲的な挑戦である。

優秀賞

郡山市長 品川萬里 (福島県郡山市)
2年にわたり「郡山市まちづくり基本指針」の策定に取り組まれたが、この基本指針は住民主体で策定する「公共計画」と行政の取り組むべき施策を整理する「行政計画」に区分している。特に公共計画においてマニフェストと市民意見との協奏により政策推進ができる仕組みを構築している。それが無作為抽出による市民会議「あすまち会議こおりやま」の開催であり、ここでの住民同士の自由闊達な議論により将来構想を策定していった。このように選挙時で公約として掲げたマニフェストと予見性の高い将来の課題を含む市政について市民自らが融合させて将来の街づくりを考える取組は見事である。
優秀賞

磐梯町長 佐藤 淳一 (福島県磐梯町)
磐梯町では自治体のデジタル変革(デジタルトランスフォーメーション、DX)を「自治体がデジタル技術も活用し住民本位の行政、地域、社会を実現するプロセス」と定義し国に先んじて積極的に取り組んでいる。これは、町長選挙で、「子や孫たちが暮らし続けたい魅力あるまちづくり」を実現するための手段としてデジタル技術を活用することをマニフェストに記述、当選後、これを具現化する取り組みを総合的かつ網羅的に着手しているところが評価できる。
優秀賞

つくば市長 五十嵐 立青 (茨城県つくば市)

現在1期目であるが、市長就任後にマニフェスト82事業についてロードマップによる進捗管理を行い、3年後に9割以上の事業が推進しているなど具体的な活動がみられる。その過程で市報等での毎年度の進捗状況周知、地域毎のタウンミーティングでの報告と対話、市民からのフィードバックを踏まえたロードマップの改善を重ねている。また、市民主体の活動を市がサポートするパートナーシップの仕組みを構築し行政主導ではない市政へチェンジ。さらに、市内各地域で市長と対話するキャラバンでの議論を重ね、市の最上位計画とマニフェストを融合させた「つくば市未来構想」を策定した。

 

■マニフェスト推進賞<議会部門> 

最優秀賞

奥州市議会 (岩手県奥州市)
二元的代表制の作動には、議会からの政策サイクルの理論化と実践が不可欠である。政策形成だけではなく政策過程全体にかかわること、監視を踏まえた政策提言の連動がみられる。奥州市議会の実践は、その中の政策形成を整理し実践した。政策提言を政策決議提案と政策立案(必要によって)を区分している。その区分を「政策立案等に関するガイドライン」にまとめている。 奥州市議会は、このガイドラインを作成しただけではなく、これに基づき実践している。政策提言書を常任委員会で作成して提言している。公共交通、交通安全対策、農業振興及び地域6次産業の推進などで成果をあげている。 サイクルをさらに充実させるために、政策財務や総合計画に踏み込むことを期待している。
審査委員会
特別賞

取手市議会・同議会事務局 (茨城県取手市)
新型コロナウイルス感染拡大の中で、住民は非常に困っている。その状況で議会は今まで以上に活動する役割が課せられていた。そこでは、まずもってオンラインによる議会活動が重要となった。 多くの議会がその危機状況で右往左往している段階で、早くからオンラインによる議会運営を開発し実践したのは取手市議会である。オンラインによる会議とそれによる政策提言である。この政策提言とともに、調査の要請や要請をする理由も提出しており積極的である。 総務省や国会にオンライン活用の規制緩和を意見書として早くに提出している。また、市議会として「デモテック宣言」を行い、オンライン会議等を充実させることを目指している。 申請者は、議会とともに議会事務局である。一体となった活動が理解できる。
優秀賞

墨田区議会事務局 (東京都墨田区)
議会改革を推進するには議会事務局の役割が重要であることは認知されている。そこで、議会事務局強化の手法が提案されている。意義のある提案がいくつもあるが、その中でも重要なのは、その力を議会力アップに活用することである。それは議会事務局職員が「やりがい」につながる。具体的には「住民自治の根幹」としての議会を作動させる一員として活動することである。議会事務局職員が団結するとともに、議会事務局も参加するチーム議会である。 いままでも議会事務局の役割が高く評価され受賞した団体もある。山陽小野田市議会事務局は、議会基本条例制定時に「気づき」として、提案した。墨田区議会は議会事務局からの提案制度を議会基本条例に規定した。それを踏まえて、事務局から豊富な提案が行われている。今後の議会改革にとっても大きな一歩である。申請者が議会事務局であることも付け加えておきたい。
優秀賞

よこすか未来会議 (神奈川県横須賀市)
議会からの政策サイクルの実践が広がっているが、よこすか未来会議の実践は、会派による政策サイクルの実践であり、議会からの政策サイクルを豊富化している。 会派マニフェスト、その具体化としての政策提言を踏まえた一般質問・会派代表質問を行い、その中間評価とその公開を行っている。 この会派による政策サイクルを充実させるのは会派議員による議論、広聴である。コロナ危機の状況でもこれらを充実させるべく、オンラインによる会派会議、オンライン公聴会(そしてハイブリッド公聴会)を実施している。会派による政策サイクルの応用である。少なくない議会で、機能停止が行われた状況で、住民に寄り添う会派として意義ある活動である。同時に、議会としての作動も期待される。
優秀賞

上越市議会 (新潟県上越市)
上越市議会は、従来からも改革を行ってきた。今回申請されている改革事項は、その改革をさらに進めるものである。 議会モニター・モニターアンケート、模擬議会、女性フォーラムなどである。それぞれ成果がある。とりわけ、女性フォーラムは、大きな成果をあげた。当初女性議員がいない上越市議会であったが、そのフォーラム後の選挙では7人の女性議員が誕生した。フォーラムによるだけとは断言できないが、女性議員を増加させたいさまざまな活動、議会モニター、模擬議会などの地道な活動が成果につながったと思われる。 議員の多様性が強調されている今日、これらの活動が全国に広がることを期待する。

 

■マニフェスト推進賞<市民部門> 

最優秀賞

株式会社チューリップテレビ (富山県)
市議会における「議員報酬の引き上げ」要請に対して、地元メディアとしてニュース取材を敢行し、政務活動費に関する市議の不正疑惑をスクープ、さらに集中的な取材と報道を重ね、14人の市議を辞職へ導いた。一般に市議会に対する市民の関心が薄く、政治家へのネガティブな報道がタブー視される地方のメディア界において、ドキュメンタリー番組やニュース特集の放送、3度にわたる市民参加型の討論イベントの開催、書籍の発行、映画の制作・配信と多様なメディアを通じて全国・全世界へ積極的な報道活動を行うことで、傑出した成果に結びつけた。ある意味で報道機関としての本業ともいえるが、地方における大きなタブーに挑んだ取組ともいえ、市民の強く広い支持がなければ実現することはなかったと考えられ、市民部門の取組として高く評価できる。
優秀賞

Oneさいたまの会 (埼玉県さいたま市)
毎月1回市民有志が集まって勉強会を重ね、市民目線から市への政策提言をまとめて発表している。毎年秋にはプレゼン大会を実施し、市長に直接政策提言を行うことで、市の政策に反映される実績も出ている。高校生から82歳までのべ1,000人もの多くの市民が関わっている多様性、2018年から35回にわたって定期的に会が開催されている継続性が高く評価される。市民の中には様々な専門家が存在し、生活に根差した課題認識が出発点となるため、行政ではカバーしきれない視点の提案が生まれる可能性がある。会の名称には、合併前の旧4市の対立を超えて、一つの市として住みやすい街にしていきたいという思いが込められている。草の根からの市民が政策づくりに関わることで、より多様でゆたかなまちづくりにつなげていける一つの道筋が示されている。
優秀賞

一般社団法人トリナス (静岡県焼津市)
シャッター通り化が進む駅前通り商店街において、民間図書館「みんなの図書館さんかく」を運営している。月額2千円の「一箱本棚オーナー制度」により、34名のオーナー契約があり、補助金・助成金を一切に受けず、黒字経営を実現している。また、日替わりのチャレンジショップとして、店を出したい人が予行練習する場を提供していることもユニークである。商店さえも成り立ちづらい経済状況にある地域において、民間図書館のオーナー制度をビジネスとして成立させていることは驚愕である。コミュニティの拠点に対するニーズとともに、その拠点を運営する側にもニーズがあるといえ、次世代のコミュニティ空間のあり方を示唆している。社会実験と位置づけ、成果をデータで検証しながら取組を進めていることもすぐれた取組といえる。
優秀賞

一般社団法人UMF (大阪府大阪市)
社会課題解決とエンターテイメントを結びつける事業の一つとして、主に政治に無関心な若者を対象として、投票率の向上につなげる活動を展開している。「選挙割」など既存の投票率向上に向けた啓発イベントの課題を分析し、選挙に「祭」のような熱狂を生み出すことをポイントとして、投票者のみが無料で楽しめる音楽フェスの開催や、レゲエアーティストとのコラボによる選挙啓発ソングとミュージックビデオの配信などを行い、若者の共感と反響を呼んでいる。一過性のイベントではなく、エンターテイメントのプロとしてターゲットやマーケットの緻密な分析を行っていることが大きな特徴といえ、関連する他の団体や企業とも積極的に協力関係を築いてプロジェクトのマッピングも行っていることが、従来の取組と一線を画しているといえる。
優秀賞

株式会社issues (全国)
有権者と政治家がユーザとして参加し、有権者が生活の困りごとや要望を投稿し、それを受けた地元議員が行政に働きかけ、政策として実現することで解決につなげていくオンラインの政策実現プラットフォームを運営。日頃は地元議員と接点のない若年層の有権者の利用が多く、その声が政策に反映されていく感動が有権者にもたらされるとともに、そういった有権者との接点が生まれ支持拡大につながる期待を持てるメリットが政治家側にも生じている。生活者起点で個別の要望が政策実現に直結する、新たなおもしろい取組といえる。個別対応を超えた全体最適をいかに達成するか、無料でスタートしているが今後どのように収益化・事業化されていくか、など新たな潮流としてどのように進化し、定着していくか、今後の動向が注目される。

 

■政策提言賞

最優秀賞 さいたま市議会議員 小川ひさし (埼玉県さいたま市)
重度障害者が就労すると、国の規制によって、仕事中は「重度訪問介護」を受けることができない。これは、就労中は、就労による恩恵を受ける企業が介護等を提供すべきという考え方があるためだ。この結果、重度障害者は、仕事中のトイレ介助や痰の吸引などを受けることができず、就労を諦めざるをえないという。 小川議員は、2名の重度障害者からこうした現状を伝えられ、さいたま市議会に、政府に改正を働きかけることを求めた。一方、国が難色を示す中で、さいたま市は、全国で初めて、就労中も重度障害者に訪問介護を行う「重度障害就労支援制度」を創設した。 重度障害者の声に耳を傾け、改正に向けて動いた行動力を高く評価したい。障害の有無に関係なく、就労を希望する人が、仕事を通じた生きがいをもてる社会が望まれる。
優秀賞

渋谷区議会議員 鈴木けんぽう (東京都渋谷区)
コロナ禍において、感染症対策の重要性が認識されているが、それまでは感染症対策は後手に回りがちだったという。この理由としては、公衆衛生学と医療経済学の基本的な知識がないと政策提言が難しいことや、平時は住民のニーズが低く、予算獲得につながりにくいこと、個々の感染症の性質が異なるために対策が難しいこと、などがあげられる。 こうした中、鈴木議員は、2007年度から感染予防を目標に、感染症対策について総合的な政策パッケージを進めてきた。例えば、各種予防接種において国に先行した助成、予防接種を受けやすい体制作り、感染症対策についての啓発強化、などである。 感染症対策の重要性を認識して、10年以上も前から地道に取り組んできた姿勢を高く評価したい。
優秀賞

NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター (長野県泰阜村)
小さな農山漁村が相互にネットワークを構築し、義務教育期間中の1年間を使って、各地域の子どもを一斉に交換留学させる――。これは、人口1,600人の長野県泰阜村のNPO法人からの提言だ。「交換留学」であるため、地域の子ども数が増えるわけではない。この目的は、子どもたちが多様な価値観の中で、様々な地域における生活を体験して、自らの地域を見つめる目を養うことにあるという。一方、留学に要する費用は、子どもを送り出す自治体が負担することを考えているが、クラウドファンディングなどで資金を確保することも考えている。 既に試験的に交換留学を実施し、他地域に交換留学を呼び掛ける段階にあるという。交換留学を体験した子どもたちに、どのような変化があったのか、成果報告が楽しみである。
優秀賞

岡山県学童保育連絡協議会 (岡山県倉敷市)
岡山県内の放課後児童クラブの調査では、受け入れ児童の中に発達障害のある子どもが一定程度いることが示された。多様な子どもへの対応に悩む学童保育指導員は少なくない。 こうした中、岡山県内では「学童保育と作業療法士の連携事業」をモデル事業として、作業療法士によるコンサルテーションなどを実施した。医学的知識をもって生活や発達を支える作業療法士の業務は、放課後の生活と遊びを通して子どもの発達を支援する学童保育指導員の業務と親和性がある。両者の連携によって、指導員の子どもへの関わりが言語化されて、指導員の自信とモチベーションが向上したという。 岡山で始まったこの取り組みは、全国に広がり始めている。作業療法士に着眼した点を評価するとともに、今後、インクルーシブな社会に向けて更なる成果が期待される。
優秀賞

子育て支援サークルNogiku (宮崎県えびの市)
相次ぐ児童虐待のニュースに対して、宮崎県立飯野高校の高校生は、子育て中の母親のストレスが大きいのではないかと考え、<えびの市>の子育て環境を調査した。そして、市内のアロマセラピストの協力を得て、母親が無料のアロママッサージを体験できるスペースを取り入れて、マッサージ中は、飯野高校の生徒や保育士が子どもを見守ることなどを始めた。  母親の産後不安を軽減して、少しでも安心して子育てできる環境を作ることを目指したという。そして自分たちの世代が子育てをする頃に、帰りたくなる故郷にしたいと考えている。 市内の子育て環境を調査して、自分たちのできる支援を考え、実践した行動力を高く評価したい。また、生徒の活動を支える地元の人々の支援もすばらしい。

 

■成果賞 

最優秀賞

多胎育児のサポートを考える会 (東京都千代田区)
多胎育児の過酷な実情を把握するため、育児中の当事者でも回答しやすいWEBアンケートを実施し、SNSでの効果的な拡散により1591世帯からの回答を得た。このようにして把握した実情をとりまとめ、多胎児家庭の抱える様々な困難を可視化するとともに、それまで多胎児家庭に対する支援がほとんどないことを踏まえ、多胎育児に特化した支援策を提言した。厚労省での記者会見、都議会、国会への陳情を経て、世論喚起と行政担当者の課題認識を実現し、国や都の2020年度予算の中に、多胎児家庭支援の拡充が盛り込まれるなど、支援制度の実現に成功した。  政策の欠落を発見し、支援策が必要となるエビデンスを収集し、当事者の必要に応える的確な政策提言を行い、これまで見過ごされがちであった課題を、「政策課題」としてアジェンダ化することに成功し、政策化を成し遂げたことは、成果賞として高く評価できる。
優秀賞

都民ファーストの会東京都議団 (東京都)

東京五輪の開催に関連する記録のうち、大半の予算を管理する大会組織委員会は民間団体(公益財団法人)であることから、東京都の公文書管理制度の対象外となっていた。東京都が大会組織委員会に出捐しているという関係にもとづいて、東京都が組織委員会に対し、文書等の保管及び承継に関して必要な指導及び調整を行うことと規定するとともに、組織委員会に対しては、文書等の適切な保管及び承継のために必要な措置を講ずる努力義務を課す「東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会に係る文書等の保管及び承継に関する条例」を、議員提案による都条例として制定した。
公文書の保存、管理をめぐる課題がしばしば指摘されている状況下にあって、巨額の資金を投じ、公共性の高い五輪大会の開催について、文書の保存と管理を制度的に担保するための取り組みとして高く評価できる。

優秀賞

東京都 (東京都)
新型コロナウィルス感染症に関する正確な情報を迅速に都民に届けるために、様々な情報やデータをワンストップで閲覧することができる「東京都新型コロナウィルス感染症対策サイト」を、2020年2月26日に設置した「新型コロナウィルス感染症対策特別広報チーム」のもと、短期間で開発し、約1週間後の3月3日深夜に開設した。ソースコード共有プラットフォーム「GitHub」を活用してソースコードを公開しており、他自治体などでの活用を可能としている。また、同プラットフォームに寄せられた提案を活用して、開設後も継続して改善・改良を行っている。自治体のWEB広報のシステムとしては極めて迅速な開発・公開を実現した上で、オープンソースのメリットを活かして継続的に改善・改良を行っていることが高く評価された。
優秀賞

認定NPO法人3keys(スリーキーズ) (東京都新宿区)
同NPOは様々な悩みを抱える10代の子どもたちが安心して支援機関につながれるよう、支援情報をまとめたポータルサイトMex(ミークス)を2016年から運営している。子どもたち目線での利用しやすさを図ってきたことにより利用者が増加し、そこから見えてきた子どもたちの状況を支援機関と共有し、支援内容の改善を図っている。2020年には長期化するコロナ禍が子どもたちの日常に大きな影響を与え、他方支援機関の活動が低下しかねない状況が生じていることを考慮し、その中で子どもたちの悩みの解消の一助となるよう、コロナ影響下で実施可能な支援を継続的に実施している。公的な支援機関と当事者との間を効果的につなぐ機能が、支援を必要としている子どもたちにそれを確保するために極めて重要であることを、実績を通して明確に示していることが高く評価される。
優秀賞

おぢやマスクプロジェクト (新潟県小千谷市)
日本国内での新型コロナウィルス感染症の拡大にともなってマスク不足となった状況下で、地場産業(錦鯉輸出業)の中国とのネットワークを通して、高品質を確認したマスクを120万枚輸入し、購入希望の市民が密を避けて購入できる仕組みを、地元企業、青年会議所、商工会議所、市役所などが連携して構築した。必要な初期投資の調達や、安全な方式での頒布などの課題を幅広い連携のなかで解決したことが特筆に値する。基幹産業のある企業の企業活動の一環としてコンテナ単位での輸入を実現するとともに、利益を目的としない事業と位置づけ、販売価格を極力安価に設定した上で、最終的に生じた余剰金は市内の飲食業組合や障がい者福祉施設に寄付してプロジェクトを閉じた。それを可能とした幅広い連携の実現が高く評価された。

 

■コミュニケーション戦略賞 

最優秀賞

町田市議会 (東京都町田市)
本会議や委員会の記録は多くの議会においてHP等で公開されるようになったが、全文を読むのも、関心がある議案の提案から採決までをたどるのも労力を費やす。その悩みを解決するのが「議案のカルテ」であり、これを創り上げた市議会・同議会事務局には市民サイドに立った試みとして拍手を送りたい。議案のカルテでは①提案理由説明のあった本会議の日②質疑・付託のあった本会議の日③審査された付託常任委員会の日④委員長報告や表決を行った本会議最終日の4日間がまとめて閲覧できる。本会議での委員長報告をそのまま記載することで委員会での議論内容を細かく知ることができるのも特徴。多くの自治体議会に広がってほしい画期的な取組み。
優秀賞

鷹栖町議会 (北海道鷹栖町)
19年12月定例会中の休日議会の新聞折込チラシを中吊り風広告風にして配布。非常にインパクトがあり、当日の傍聴者数は前回より2倍以上増え35人に。議員の顔写真とともに「連続質問回数(だけは)No.1」といったキャッチがつけられており、このチラシには「この手があったか」と感じた議会関係者も多いのではないか。また、20年6月定例会(3月から試行)から傍聴者資料として一般質問の要約と通信簿を配布。通信簿は傍聴者が、テーマ設定や質問力、聞き取りやすさ、追及力、説得力の5項目について5段階評価するもので、採点結果を議会報で公表。議員間の合意形成はもとより、より良い質問をしようという意気込みと議員の懐の深さが感じられる取組み。
優秀賞

台東区議会議員 本目さよ (東京都台東区)
20年2月から主に育休中や就労中のママを対象に「ママインターン」を実施(1・2期生で計11人参加、期間は半年~1年)。「ママインターン」が議員活動や行政の仕組み、政策について知り、当事者としてのリアルな声を議員を通じて行政に届けることができる。これまで育休中のママたちの声は反映されづらかっただけに画期的な取組み。実際にコロナ禍の区立公園のサービスのちょっとした問題点を取り上げたり、保活(保育園入園のための活動)の困難さから保護者に必要な「保育園ママ座談会」を行ったり。「近隣にこのような繋がりが作れたことは一生モノの財産」という参加者の声がママインターンの必要性を物語っている。
優秀賞

敦賀市議会議員 前川和治 (福井県敦賀市)
議会に提案された予算書を市民に即日公開し、市の予算を市民と一緒に審査する「みんなde議会」を実施。決まった予算ではなく、これから決めていく予算を審査することで、市民にとって税金が自分事になる意欲的な取組みだ。市民間で合意形成に至った事項は議員が議会で発言、そうではない事項も市民意見として意見集約書を作成し、執行部に提出。その結果、これまでに6事業が廃止、12の新規事業が創設されたことで参加者は予算をリアルに感じることができたのではないか。「結論を報告する議会報告会は不要」としているが、議会における決算審査と同様に位置づけ、次年度予算へつなげるサイクルを回すことで、「みんなde議会」の議論はさらに厚みを増すのではないか。
優秀賞

一般社団法人 Do It Yourself (岐阜県岐阜市)
若年層を対象に、楽しんでいるうちに、今まで知らなかった社会問題や政策の「存在に気づく」ゲームを開発。その「ゲーム限界都市」はプレーヤーが市長となり、押し寄せる社会問題に翻弄されながらも、財源と政策を使って幸福点カード「生きがい/健康/所得」を獲得することで、市民の幸福(点)を競うカードゲーム。19年度は岐阜市教委の後援を得て、図書館での体験会とゲーム大会を実施、同市選管との連携プロジェクトも調整中という。18歳選挙権が16年6月からスタートしているが、社会問題や政策に関心を持つ経験がないまま投票を行うケースも少なくない中、若者が慣れ親しむゲームを使って投票率向上にも寄与しうる取組みだ。

 

■躍進賞 

最優秀賞

湯沢市議会 (秋田県湯沢市)
公募した女性の市民10氏が参加した模擬議会「女性議会」を開催した。3年前に改選された同市議会は現在、女性議員がいない。このため、女性に市政を身近に考えてもらう必要があるとして市と議会が連携し、実施した。具体的には、公募を通じて決めた女性10氏が学習会や議会傍聴を経たうえで昨年10月24日、一般質問形式による質問を行った。内容は子育て、地場産業の活性化、高齢者福祉、市施設の活用など広範囲に及んだ。こうした活動は、女性の住民行政への関心を高めるだけでなく、施策に多様な意見を反映させていく観点からも有意義であろう。女性議員がいない議会であっても、努力と工夫の余地があることを示した好例となった。
優秀賞

喜多方市議会 (福島県喜多方市)
「できるところから改革していく」をモットーに着実な議会改革を実践している。直近例としては2018年、ICT活用に向け、会議システムとタブレットを導入した。ペーパレス化を議会の最重要事項に位置づけたうえで、約1年で必要な条件を整備した。同市議会は2013年に議会基本条例が制定される以前から、議場での一問一答方式の導入、議会日程の市民への周知などに取り組んできた。条例制定後も会議のネット配信や議会報告会の運営見直し(意見交換会への改組)などをコンスタントに実現している。早大マニフェスト研究所による議会改革度ランキングにおいても18年度の205位から昨年度は55位に躍進した。継続的な歩みは努力は高く評価すべきものだ。
優秀賞

精華町議会 (京都府精華町)
マイペースに、オールラウンドな議会改革を実践している。モットーは「まず、一度やってみよう」「住民と共に学び、共に考え、共に実践する」。その一環として3年前から、住民参加型の研修会を実施し、学校いじめ問題などを議論している。また、正副議長選挙における所信表明を制度化した。これまでも通年議会、一問一答方式、住民との意見交換、全員協議会の議事公開などを着実に実施してきた。09年の議会基本条例制定も、すでに実現した改革の定着と、積み残した課題の整理という観点から行ったという。政府や府県、近隣自治体の動向を過剰に意識せず、足元を固めようという姿勢は共感できる。住民本位で主体的に課題を解決しようと取り組む、いぶし銀の議会である。
優秀賞

岸和田市議会 (大阪府岸和田市)
聴覚障害者の議会活動へのアクセス改善に向け、議会の録画中継に字幕表示を導入した。同市において手話言語条例制定が昨年施行されたことを踏まえ、議員が発案した。議会事務局は当初、地元ケーブルテレビ局放映による字幕対応を検討したが、難しく、動画投稿サイト「ユーチューブ」の表示機能の活用を思いついた。ユーチューブの自動文字起こし機能では誤字が多いという課題が生じたが、会議録作成用の起こし原稿を用いることで解決した。既存のデータ処理を活用するため、追加費用は発生していない。字幕つき動画の配信は聴覚障害者だけでなく、高齢者らに質疑の理解を深めるうえでも有効であろう。他議会も大いに参考すべき工夫だ。
優秀賞

岡山市議会 (岡山県岡山市)
政令市議会の中で議会改革度が上位に位置していないとの認識を踏まえ、短期間で改革を進捗させた。元号の「令和」改元を契機に、会派枠を超えた「チーム議会」を合い言葉として、改革に着手した。たとえば児童虐待問題をテーマに市民200人が参加した初の議会報告会を開催した。タブレット導入、さらに委員会も含む会議録のホームページを通じての公表など、ICT活用や情報公開も積極化している。規模が大きい政令市議会は政策提言などの活動が政党か個人単位に分かれやすく、議会全体としての動きが取りにくい。だが、岡山市の場合「チーム」を意識することで、議会活動の活性化につなげた。都道府県議会や政令市議会が地方議会全体のイメージに与える影響は大きい。それだけに、注目すべき改革といえる。

 

■特別審査委員による特別賞

特別賞

箭内道彦 選

#おうち先生(静岡県富士市)

特別賞

秋吉久美子 選

一般社団法人Shien(大阪府岸和田市)