第16回受賞結果

※受賞団体・個人名の下段は、審査委員講評を記載しています
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■マニフェスト大賞

グランプリ

出産議員ネットワーク・子育て議員連盟
(東京都豊島区)

 

■マニフェスト推進賞<首長部門> 

最優秀賞

加賀市長 宮元 陸(石川県加賀市)
選挙時に市民と約束したマニフェスト・サイクルを見事に回しているのが宮元市長である。1期目のマニフェストをバージョンアップさせた2期目のマニフェストも「第2次加賀市総合計画」の前期実施計画「加賀躍進プロジェクト」へと取りまとめ着実に実行、2期目の折り返しとなる時期に学識者5名からなる「加賀市長公約評価委員会」を組織し外部検証を実施、2期目任期終了時には「マニフェスト検証大会」を開催した。これらの取組を市民と共有するため市ホームページで公表、「市政懇談会」でも評価結果の概冊子を配布し市民への説明責任を果たすことに努めた。

優秀賞

君津市長 石井 宏子(千葉県君津市)

人口減少社会や変化する住環境や価値観の多様性等から旧くなった公共施設の再配置はこれからの地域にとって大きな課題であるが時に行政と住民との対立のもとになる事もある。君津市は市民104名をプロジェクトメンバーとする「君津まちづくりプロジェクト」を立ち上げ、「施設レビュー」・「住民協議会」の2部構成で様々な年代や地域の市民が活発に意見をかわした。行政が決定し、市民の意見を聞くと言う手法は数多くあるが市民自らが様々な価値観を開示・共有しながら総意をまとめ上げるという手法は全国の地方自治体の範となる取組と言える。

優秀賞 高森町長 壬生 照玄(長野県高森町)
壬生町長の特徴は、まちづくりの担い手を従来通りの行政だけでなく老若男女問わず住民が参画しやすい環境を整備したことと外部者を活用することにある。箱物建設や大きな政策を実施するのではなく、あえて成果を可視化しづらい「人材育成」をマニフェストの基本姿勢に掲げ取り組んでいる。高森町は人口が増加してきたが自治会加入率は70%を割り消防団員は定数の大幅不足、伝統芸能も担い手不足になるなど人はいるが地域の活力は衰えている。未来の社会を背負っていく小中学生は「地域学習」や「みらい懇談会」等を通じて、大人は「熱中小学校」を通じて等多様なまちづくり参画プログラムを創った。
優秀賞

日野町長 堀江 和博(滋賀県日野町)
まちづくりも然りだがコロナ禍におけるワクチン接種等行政の取組にもスピードが求められる。また、その時上手くいっても属人的になり経験値を後世に活かせない場合がある。日野町ではベンチャー企業と連携し、スピーディ且つエビデンスに基づく行政運営を取り入れている。例えば、高齢者の移動手段や子どもの通学需要、工業団地への通勤や飲食店への送迎等を含め、幅広く町民の移動全体を把握するためビッグデータを活用した交通体系の検討に着手。ワクチン接種では「日野町ワクチンメーター」を開発し、接種率やワクチン供給量等の情報をリアルタイムで公開している等これからのまちづくりに大いなる参考となる取組と言える。
優秀賞

大津町長 金田 英樹(熊本県大津町)

金田町長は町議会議員時代からマニフェスト・サイクルを回しマニフェスト大賞を受賞されたこともあるが、町長選挙においてもコロナ禍で住民とのリアルな会話の機会の創出が困難になり有権者が候補者のビジョンや政策全容を知る機会が非常に少ない中でマニフェストを住民と共有するために見やすいデザインのマニフェストを作成して全戸配布するだけでなく概要版も作成して更に読みやすい工夫を凝らした。当選後も自作HP等で進捗を随時更新するとともに、町の総合計画への落とし込みも進めながらマニフェストサイクルの実現に取り組んでいる。その結果、低下していた投票率が上がり、特に若者の投票率が向上する等政治に距離があると言われる層の関心を引きつけた。

 

■マニフェスト推進賞<議会部門> 

最優秀賞

出産議員ネットワーク・子育て議員連盟(東京都豊島区)
女性議員は、あまりにも少ない。女性の政治進出を推進するには、さまざまな手法が考えられる。社会意識・規範の変更とともに、制度的変更も必要である。出産議員ネットワーク・子育て議員連盟は、出産や育児を経験した議員によって構成されている。  出産・育児等家庭生活と議員活動の両立のための体制整備のための要望活動を行い、実現に向けて大きな成果をあげた。また、全国調査の結果を踏まえて、問題点を整理している。  これらの活動は、「第5次男女共同参画基本計画」への反映、全国三議長会の標準議会会議規則の改正、「政治分野における男女共同参画推進法」の改正法につながっている。さらなる展開が期待される。
優秀賞

取手市議会・同議会事務局 (茨城県取手市)
取手市議会は、新しい民主主義を創造する「デモテック戦略」、その延長線上にある「音声テック」、AI音声認識技術を用いた新しい議会の構築をめざしている。その成果によって何度もマニフェスト大賞を受賞している(昨年の第15回では、マニフェスト推進賞〈議会部門〉優秀賞・審査委員会特別賞を受賞)。  このバージョンアップを図っている。昨年は、コロナ禍でのオンライン会議等の充実だった。今回、さまざまな技術(Zoom、AI音声認識)の活用によって、住民の議会参加を促進する。「議会を知れば議会への住民理解は向上する」という視点を議会は確認している。それに基づき、さまざまな技術による改革が展開されている。申請者は、今回も議会と議会事務局である。チーム議会が理解できる。
優秀賞

高山市議会(岐阜県高山市)
議会基本条例の基づき、広大な市域を面的に担保できるよう住民参加手法を実践している。今回、高校生を対象とした意見交換会を開催した。4高校5キャンパスで行った。二部構成で行っている。第一部は、学生による今後のまちづくりへの提案、市が抱える課題への対策、夢のあるプロジェクトなどを発表し、全議員がそれを聴き講評する。第二部では、高校生と議員が、市が抱える課題などについて意見交換している。  意見交換会を通じた意見発表や意見交換における意見は、予算審査、決算審査、委員会における調査活動、一般質問などに活かしている。  提出資料では(2019年2月11日開催)、昨年度はコロナで中止され、今年度は調整中ということである。新たな展開が期待される。
優秀賞

西脇市議会(兵庫県西脇市)
コロナ禍の緊急事態下にあっても「議会が機能できる政策サイクルの取組みとなっている」と自己評価が行われている。長期にわたって、議会改革を行ってきた自負から出た評価であろう。  コロナ禍が拡大する中で、自治会長と課題懇談会(意見交換)、3つの商店会との意見交換を4回実施し、要望事項をまとめ最終の提言書を市に政策提言した。困っている住民、商店主の側に立ってさまざまな解決策を模索した。非常事態でも政策サイクルを作動させている。  「議会の本気度が住民や行政にしっかり伝わると、様々なモノ・コトが前に進んでいくことを再認識」して、西脇市議会はチーム議会として前進している。
優秀賞

輝け!議会 対話による地方議会活性化フォーラム(福岡県福岡市)
東高西低といわれている議会改革をすすめるべく、九州の地方議会議員有志が集って、情報交換、意見交換、勉強会、フォーラムなどを行っている。これらを通じて、九州での地方議会改革に寄与することを目的として活動している。なお、この一環として調査も行っている(コロナへの議会対応)。  2009年から長期にわたって活動しているが、昨年から今年にかけては、オンラインで活動している。コロナ禍の対応といった緊急の課題とともに、感染症対応だけではなく自然災害への対応にまで拡大している。  こうした地域ごとの活動は、善政競争を進める重要なネットワークになる。地域別ネットワークのモデルである。今後も期待したい。

 

■マニフェスト推進賞<市民・団体部門> 

最優秀賞

那覇市立仲井真中学校 伊波 勝之(沖縄県那覇市)
高校の公民や総合学習の授業において実際の議会との接点をつくる取組は見られつつあるが、中学校の地方自治の単元の授業で、市議会への陳情まで行ったのは極めて先駆的。市議会議員をゲストティーチャーに招き、市の課題や議員の役割について理解を深めた上で、実際に市に必要な条例案を考え、6つの条例案を陳情として議会に提出した。その結果、那覇市で初めて議会質問に生徒が招集されるなど、議会での議論を喚起することにつながった。中でも、制服のズボン、スカートを性別に関係なく自由に選べる条例の制定を求める陳情が本会議で採択された。中学校の社会の単元には制約が多いと思われるが、模擬ではなくリアルの政治に触れることによる主権者教育の効果は大きく、市議会にとっても刺激になり、開かれた議会へのきっかけになったのではないか。
優秀賞

ドリーム・シード・プロジェクト(岩手県盛岡市)
自治体経営シミュレーションゲーム「SIM」自体は、すでに全国に広がり、多くの地域版ができているが、高校の探究型授業に組み込み、高校生が運営の中心となることで、主権者教育としての効果を高めた点が独自で斬新である。高校生約400名のアンケートを分析して事業案を設定したり、途中に模擬選挙を実施し、当選市長の公約によりシナリオが変わったりするなど、高校生の視点を生かした独自のアイデアがかなり本格的に盛り込まれている。体験会の開催を10回にわたって重ね、探求型学習プログラムの開発を考えるフォーラムも2回開催するなど、丁寧なフォローアップも行われている。結果として、参加者の43.3%が「自分で国や社会を変えられる」と感じられるなど、単なるゲーム体験ではなく、高校生が地域を自分事として感じられる人材育成プロジェクトに昇華されている点が評価された。
優秀賞

知的・発達障がい者のための主権者教育の手引き製作委員会(東京都狛江市)
平成25年に公職選挙法が改正されるまで、成年被後見人の選挙権が認められていなかったことはどれだけ知られているだろうか。やっと保障されても、成年被後見人や知的・発達障がいのある人が実際に選挙権を行使できるのか、という現実の壁が存在する。この重大な課題に、当事者が自己選択・自己決定できるよう教育面から支援しようとするアプローチが優れている。小中高の各段階の学校や卒業後の施設の関係者が集まり協力することで、発達段階に応じた切れ目のない取組が体系化されているとともに、実践例が掲載され実用性の高い手引きになっている。事例研究を通じて、投票支援カードなどの支援ツールの開発につながっている点も注目に値する。これだけ当事者起点の総合的な取組がボトムアップで立ち上がっていることに驚きを禁じ得ない。
優秀賞

まちづくりアクション@日進(愛知県日進市)
市民協働の形骸化に危機感を持った市民有志が、私たちのまちづくりを「おまかせ」にしない!というコンセプトで集まり、勉強会、タウンミーティング、議会・審議会の傍聴、市の事業に対する現地調査、アンケート調査など多角的な活動を切れ目なく展開している。特筆すべきは、議会の映像配信を求める請願やコロナで議員の質問時間を半減したことへの抗議文など、議会に積極的に働きかけ、動かしている点である。その前提として、議会の傍聴を継続的に行い、活動報告通信で発信。議員の一般質問回数をグラフ化し、働く議員を応援する姿勢も示している。この通信は、年に4回、人口9万人の市で23,000部を配布し、10号まで発行。団体が発足して2年余りであるものの、行政・議会に深く切り込み、質の高い活動と発信を継続しており、会員数も112名になるなど影響力を高めていることは評価に値する。
優秀賞

政策研究ネットワーク「なら・未来」(奈良県奈良市)
奈良市で質の高い研究・実践活動を積み重ねている実力派の市民シンクタンクが3つの取組を展開。「高校生による奈良市へのまちづくり提案コンテスト」は、約10校を訪ねて校長に協力依頼するなどの努力により、49件もの応募を集めた。授賞式&プレゼン大会は、奈良市の仲川市長や市教委の幹部の出席を取り付け、その場の提案に終わらせず実現につなげる仕掛けも行っている点はさすがである。「奈良市長選挙立候補予定者による公開討論会」は、コロナ禍で青年会議所が開催を見送る中、ZOOMの活用により全候補者が参加する形では唯一となる討論の場を見事に実現した。「仲川市政3期12年の検証評価論文集」は、まさに専門家5人による学術的なまちづくり論文集といえ、これだけの高い調査・研究力を有する市民団体は他に類を見ない稀有な存在といえる。

 

■政策提言賞

最優秀賞 足立区議会議員 小椋 修平(東京都足立区)
2020年4月、約200名が参加する超党派の自治体議員ネットワーク「コロナ災害対策自治体議員の会」を片山薫小金井市議と共に立ち上げた。困窮者からのSOSに対して現地駆けつけスタッフとして活動しつつ、扶養照会が生活保護申請を妨げている実態を現場で明確に把握した。同年6月の本会議代表質問で、生活保護の新規申請件数に対して扶養照会を経ても何らかの援助が得られる例が極めて少ない実態を明らかにし、それをメディア等に発信して世論を動かし、各議会から自治体や政府への改善の働きかけを行った。後に厚労省から自治体へ改善の通知が出されるなど、困窮者支援と生活保護行政の改善を推進したことは、議員としてきわめて大きな政策改善への貢献である。
審査委員会
特別賞

WOMANSHIFT(全国・その他)
「政策実現できる女性議員を増やすこと」をミッションとする超党派の女性議員ネットワークWOMANSHIFTは、女性が議員に立候補する時のハードルとなっている2点、①立候補時の住所公開、②旧姓使用が認められにくいことについて改善要望を総務大臣に提出した(2020年7月)。そのすぐ後、総務省からの通知(技術的助言)が出され、立候補者に関する告示から性別が除かれ、住所は市区町村までとすること等、旧姓については戸籍謄本で確認できれば通称使用を認定して差し支えないこととされた。これを受けて、翌年の都議選をはじめとして、それが実現されている。当事者の視点で気付く具体的な改善課題を明確に表出し、改善に結びつけたことは高く評価される。
優秀賞

Social Green Projects in NAGAREYAMA(千葉県流山市)
流山市にとって重要な地域資源である「斜面緑地のみどりがかたちづくる風景」を、区画整理事業などのなかでどのように守っていくか、貴重な大木や残すべき緑を抽出し、点・線・面的に残す手法を自治体に提案した。市民目線と専門家知識を組み合わせることにより、市民の実感を踏まえつつ実効性のある提案をまとめることに成功している。並行してマイモリ文化(森を楽しみ、慈しみ、守る文化)を根付かせることにより、みどりをパブリック化し、それを愛する人々によって守り育てていく思考の転換を目指す活動を展開していることは、郊外のみどりの生活環境が魅力となっている地域の将来の構築に向けて重要な課題の提起となっている。
優秀賞

Code for YOKOHAMA(神奈川県横浜市)
横浜を拠点に活動を展開するシビックテック団体「Code for YOKOHAMA」は、2017年の横浜市長選に向けて提言した「技術駆動都市ヨコハマ2030」をその後もフォローアップし、2021年8月の横浜市長選挙に向けて、アップデートした提言書をversion 2.0として発表した。広く市民に呼びかけて募集した提案を踏まえて、さまざまな専門性をもったメンバーが政策提言を取りまとめるなど、市民性と専門性のバランスを考慮した取り組みは貴重である。また、提案のバージョンアップのためのプラットフォームとしてGitHubを活用したり、data提言するだけではなく、自分たちも手を動かして行政と協働して政策決定を支援するなどの活動は注目に値する。
優秀賞

子どもの事故予防地方議員連盟(全国・その他)
子どもの事故予防地方議員連盟は、全国75名の地方議員が、予防できる重大事故から子どもたちを守るために学び、議論し、政策提言をしていく超党派の議員連盟である。さまざまな専門家から日常的に意見交換や相互協力ができる体制を築き、全国の地方議員ネットワークを生かした調査活動を通して現場の情報を集約することができる。それらを通して、安全のための政府のガイドライン等が存在していても、周知ができていないようなリスクについて、事故に関する事実や、一般質問を通しての改善事例などを周知すること、関連事業者への働きかけなどを通して、子どもの事故予防を前進させることに着実につなげていることが高く評価できる。

 

■成果賞 

最優秀賞

遊佐町少年町長・少年議員公選事業(山形県遊佐町)
山形県遊佐町では、学校外で民主主義を体験・学習することなどを目的に、町内の中高生600人余りが有権者となって、少年町長1名、少年議会議員10名を選出する。そして少年議会は、有権者のアンケートを参考に政策を掲げ、その実現に尽力する。しかも、同議会には町から政策予算(約45万円)が与えられ、決議した政策の実現に活用されるという。  少年議会のこれまでの活動をみると、町のイメージキャラクターの設置、JR東日本へのダイヤ改正の要望、特産品の開発など様々だ。2003年に始まり、今年度で19期目を迎えている。 この事業によって、若者は主体的に地域づくりに参加する機会を得て、それが民主主義教育にも繋がっている。20年弱の長期にわたり実施された取組みは、町の未来を変えていくだろう。今後の地域の発展に注目したい。
優秀賞

つくば市政策イノベーション部(茨城県つくば市)

公職選挙でインターネット投票が認められれば、投票率の顕著な上昇を期待できる。そこで、つくば市では、これまでインターネット投票の実証実験を行ってきた。 今回の新たな企画として、つくば市が、文部科学省、筑波大学、民間企業と連携して、デジタルIDやブロックチェーン技術を活用した全国初のインターネット投票を、県立高校の生徒会選挙で実施した。具体的には、高校生160人が、「主権者教育」「デジタルIDとブロックチェーン技術」「通信・5G」について事前学習した上で、自分のスマホや貸与したスマホから投票を行った。インターネット投票の技術を更に進化させるともに、公職選挙法の改正や、特区を利用した市内でのインターネット投票の実施なども進めていく必要があろう。今後の展開に期待したい。

優秀賞

一般社団法人Social Up Motegi(栃木県茂木町)
一般社団法人Social Up Motegiは、栃木県茂木町の4名の役場職員によって、2020年に設立された。地方公務員が「2枚目の名刺」をもつことにより、地方公務員の立場とは切り離した経済活動や情報発信の実施を可能にした。地方公務員法に違反しないように兼業許可を要しない内容となっていて、非営利で、社会貢献活動の一環として行われている。具体的には、茂木町産の間伐材で作った積み木や、「もてぎ放牧黒毛和牛」のブランディングと販売を実施した。総売上は約300万円で、純利益の約12万円のうち6万円を町に寄付したという。 地方公務員が「2枚目の名刺」をもつことによって、地域で新たな創意工夫が生まれる可能性がある。今後の更なるチャレンジに期待したい。
優秀賞

大津市議会(滋賀県大津市)
大津市では、新型コロナウィルス感染症のため、2020年4月末から5月初旬に本庁舎への立ち入りが禁止となった。幸い市議会の会期中ではなかったが、会期中であれば、本会議の開催が不可能になったという。 この教訓を活かして、コロナ禍でも議決機関としての役割を果たせるように、大津議会は「オンライン本会議」の実現に向けて動き出した。具体的には、地方自治法改正を求める意見書の議決、「オンライン模擬本会議」を開催して実務上の実験の実施、条例の一部改正、国の担当大臣への要望書の提出などである。 オンライン議会の準備を市議会において進めるとともに、国にも働きかけていった行動力を高く評価したい。そして、オンライン議会の推進は、コロナ禍のみならず、育児や介護などを抱える多様な人材の議会参画にとっても有用であろう。
優秀賞

奄美市 押川 裕也(鹿児島県奄美市)
コロナウィルス感染症への経済対策として、全国で「特別定額給付金」が支給された。その際、奄美市では、同給付金の支給業務を最短で4日間、平均で6日間以内に実施した。この背景には、以前から導入を進めていたRPA・AI-OCRを活用したことがある。給付まで長い期間を要した自治体が多い中で、奄美市のような短期の給付は珍しく、住民から感謝されたという。 これは、偶然の成果ではない。平時から新しいテクノロジーやツールを利用して、トライ&エラーをしてきたことがあるという。また、RPA導入前に職員をセミナー等に参加させて人材育成を図っていた。 デジタル化によって、自治体職員は「ひと」でなくては実行し得ない業務に集中できるようになる。小規模な自治体のモデルケースとして、全国に広げることを期待したい。

 

■コミュニケーション戦略賞 

最優秀賞

一般社団法人リテラシー・ラボ(東京都世田谷区)
市民が映像制作の過程を通じて、住んでいる地域や社会と向き合い、自らの考えを表現する映像教育プロジェクト。東京都では、外国にルーツを持つ若者たちが、自らが持つ価値観や葛藤と向き合いドキュメンタリー作品を完成させた。多様性という言葉が指す意味と向き合う機会は限定的。本事業では、完成作品の公開を通じて多様性豊かな社会について考える機会の創出を目指して取り組んだ。 参加した若者たちにとっては自己肯定感や地域社会に参画する機会の創出につながり、鑑賞した市民からは「多様な文化背景を持つ市民がいることが、地域の魅力や豊かさに感じた」などの感想が寄せられた。映像教育プロジェクトの大きな可能性を感じる取組み。
優秀賞

磐梯町役場デジタル変革戦略室(福島県磐梯町)
磐梯町は人口3400人程度の小さなまち。2019年11月に全国で初めて自治体最高デジタル責任者(CDC)を設置したのを皮切りに、2020年7月にデジタル変革戦略室を設置、同時にデジタル変革戦略の第1版の策定を行い、21年7月に第2版を発表した。6つの将来像を掲げており、中でも①デジタルからデザインへ~脱デジタル宣言~②働き方の再デザイン~いつでも、どこでも、誰とでも~③ゼロベースの自治体のデザイン――が特徴。戦略の実行主体である町職員が、主体的に業務をディレクションするための指針となるよう「現場での実装が行いやすい」ものに重きを置いているのも先駆的。段階的なアップデートを行うことも従来にはない戦略性を感じる。
優秀賞

江東区議会議員 鈴木 綾子(東京都江東区)
SNSによる情報発信は地方議員においても広く行われているが、誹謗中傷対策は喫緊の課題。鈴木議員は2019年に、誹謗中傷の発生を防ぐため地方議員では初めてとなる「SNSガイドライン」を策定した。策定にあたってはSNS活用の専門家・弁護士などとも相談。免責事項や利用者による書き込みの削除などについて具体的に記述し、悪質な場合は「インターネット事業者、警察への通報や法的措置を行う場合もある」と明記している。 同ガイドラインはSNSを安心して運用する助けとなっている。議員からの問い合わせや、地方議員勉強会での講演・個別相談対応によるガイドライン普及活動などを通じて、ガイドラインを策定する議員が増加。事例の水平展開が進んでいることも特筆される。
優秀賞

加古川市役所企画部政策企画課スマートシティ推進担当(兵庫県加古川市)
「スマートシティ構想」の策定にあたり、その主役となる市民の意見を可能な限り構想に反映するため、オンライン上で議論ができる場として「市民参加型民主主義プラットフォーム:加古川市版Decidim」を立ち上げた。「みなさんの声を実際の政策に反映させるデジタル・プラットフォーム」と銘打ち、オンラインとオフラインを融合した意見収集を実現。安心して話してもらえるよう登録には名前が必要だが公開されない。構想策定においては地元の高校がなどで活用し、導入初年度は300ユーザーのうち約4割が10歳代という特徴的な使われ方をした。コロナ禍はもとより、アフターコロナにおいてもその活用と合意形成が大いに注目される。
優秀賞

福山市(広島県福山市)
福山が大好きな方や情報発信意欲のある方を「福山アンバサダー」に認定。「#福山アンバサダー」を付けて投稿することで、フォロワーを通して世界中に発信し、福山の魅力をよりたくさんの方に知ってもらう取組み。2017年10月に活動を開始し、認定者数は905人、総フォロワー数は約220万人(2021年8月1日現在)に及ぶ。アンバサダーは原則無報酬。限られた予算でのより効果的な情報発信という側面も注目される。 アンバサダーミーティングやアンバサダー同士の交流の場(限定フェイスブック)も運用するなど、マーケティングの視点で傾聴、会話、活性化、支援、統合のフェーズを意識した事業運営を行っているのも特徴。

 

■躍進賞 

最優秀賞

西条市議会(愛媛県西条市)
議員間討議を主軸に据え、議会改革を進めている。ここ数年の進展は、出色の存在。2016年9月の議会基本条例の制定が改革の跳躍台となった。議員間討議に特別委員会を活用し、議会定数の2人削減の道筋をつけた。かねてから議員による政策提言会も毎年開いており、昨年度までに提言された項目は166にのぼる。コロナ禍を受けてデジタル化も推進している。一連の活動の結果、全国改革度ランキングは2017年の614位から338位(18年)、162位(19年)、昨年は30位と、3年間で大幅な上昇を遂げた。四国地方の議会が30位以内に入ったのは、徳島県那賀町とともに初めてという快挙である。
優秀賞

まつどでつながるプロジェクト運営協議会(千葉県松戸市)
子育てをする家庭が孤立しないようにするため、千葉県松戸市で支援のネットワークづくりに取り組んでいる。公的支援が届きづらいが、虐待などに陥る危険のあるグレーゾーンの家庭と「つながる」ことで、子育てしやすい環境づくりを進めている。官民の子育て支援関係者が相互連携を深める枠組みとして「地域円卓会議」を設け、課題を共有している。同時に、子育て世帯へのオンラインによる情報提供や、ひとり親家庭への支援などを続けている。今般のコロナ禍にあたっても、移動販売車(キッチンカー)を活用した「居場所づくり」を図るなど、地域密着型の活動に注目した。
優秀賞

知立市議会(愛知県知立市)
住民への情報公開と対話、参加に主眼を置いた多彩な議会改革を続けている。今般のコロナ禍に対応してデジタル化を推進、「公開を止めない」「対話を止めない」などを合い言葉にオンラインを活用した議会報告会の開催や、議員へのタブレット貸与などを実施した。常設的に市民の声を聞く「モニター会議」を制度化したほか、市内の高校生が市政の課題について協議する「高校生議会」の開催も実現した。高校生議会は生徒が代表質問で通学路の安全対策などのテーマを発表してから意見交換し、議場で報告する形式だった。昨年のマニフェスト研究所の議会改革度全国ランキングは69位で、たゆまぬ改革が評価された。
優秀賞

浜田市議会(島根県浜田市)
市民が議場における5分間のスピーチで、暮らしや市政に関する意見や要望を発言する「フリースピーチ」を実施した。  新型コロナ感染対策で議会報告会を中止したため、愛知県犬山市議会での実施例を参考に、市民の声を聞く場として設けた。さまざまな形で周知に努めた結果、募集定員の10人を上回る17人のスピーチが実現した。スピーチにおける発言について全員協議会で議論するなど、フィードバックも心がけている。マニフェスト研究所の全国改革度ランキングも2017年の224位から昨年の87位まで上昇している。一連の議会改革への努力も含めて評価した。
優秀賞

那賀町議会(徳島県那賀町)
「住民に信頼される、わかりやすく開かれた議会」を目標に議会改革に取り組み、着実に成果を得ている。 2012年9月から3次にわたる「議会改革調査特別委員会」を改革のエンジンとして通年の会期制、議会基本条例の制定、住民との「車座会議」などを実現してきた。特に最近は執行部の理解も得つつ、事務事業評価など決算審査の充実にも力を入れている。「ハコ物」の整備について議員討議で点検するための検討委員会を開いたり、「山づくり条例」を議員提案で制定したりするなど、独自の取り組みも光っている。人口減少問題の議論も活溌に行っている。昨年のマニフェスト研究所の議会改革度ランキングは26位で、四国地方の議会としては過去最高だった。

 

■特別審査委員による特別賞

特別賞

箭内道彦 選

生坂村議会議長 太田 讓(長野県 生坂村)

特別賞

箭内道彦 選

若者と政治をつなげる会(福岡県 飯塚市)

特別賞

秋吉久美子 選

さいたま市議会議員 高子 景(埼玉県さいたま市)

以上

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